【第202回3月26日分】「特異点」ディスカバリー部門 エントリー


令和哲学
AWARD

特異点ディスカバリー部門

Iori Mashiko  

増子 衣織さん

今日の特異点

今回のテーマは「差別と偏見を超える~「障害」が教えてくれる人間の可能性と人生の価値~」だった。
「障害は、個性」とファシリテーターのやすさんが言ったとき、ドキッとした。
これまでの私からみたら、陳腐に使ってきた無礼なフレーズだったからだ。
このアプローチはしっくりこない・・率直に思ったことだ。

 

私が積極的にかかわりたくない話題のTOP10にはいるものが「障害」についてだ。
当事者のアイデンティティに関わる繊細な内容と思い、下手に口にすると私自体の人格の評価に不本意な形で下されてしまうような怖さがあった。
さらに当事者とこの議題で対等に話せた記憶がない、だから避けたい話題というのが気分かもしれない。
もっと言えば、私自身がこの話題に深く取り組んできたことがなかったから、当然対等な意見交換ができるわけないだろう。

 

当事者とされる人はこの「障害」について身を切るように考えてきたはずだ。
人間は同じ経験を共有することはできなくても、想像する力はある。
でもその想像力も所詮自分の経験になぞらえた程度だろう、どこか「あなたには分からない」このことを突き付けられるそんな辛みを感じるテーマであった。
自分が経験するまでギャップが埋まらない、そんな気がしてしまっているのだ。

 

だから、このトピックが出れば波風を立てず終わらせたく「個性よね」としか意見がなかった。
それがどちらにとっても最善な結論、会話集結の常套句のように。
これを言ってる自分は心地よくなかった、個性でまとめていいのか?どこか私は相手の尊厳について的確に表現できたことがなかったからだ。

 

しかしながら、ここは令和哲学カフェらしく一味違ったアプローチを仕掛けてみせてくれた。
今回のファシリテーターのやすさんは自身の誕生から現在までの経験をとおして「障害」がもたらす障壁から学んだすべてのことを、
あらゆる道具やプレゼンテーションで、この私にとっての難題をほぐしていった。
ふつうとは何か?と様々にディスカッションを展開していく。ここには丁寧で、今回のテーマを的確に伝えようとする工夫がたくさんちりばめてあり関心しきりだった。
まさに彼の「人生をかけた」という言葉にふさわしい5日間だった。

 

回を重ね思ったことは、「障害は、個性」というフレーズに対して、彼の言う個性と私の言う個性はどうも相違があるようだ、ということだ。
そして、私は一体これをどう理解したらいいのか??
その糸口に一気に火を点けたのは、Noh先生のまとめ最終日の一言だった。

 

「機能の制限はあっても、技術の制限はない」

 

これにより、私は目から鱗が落ちる経験をしたように思う。

 

なるほど、私が個性と呼ぶとき、私はどこか、障害だけの部分的なことだけしか見てなかったんだ。
“機能”として人間をまなざしてみたときに、はじめて開かれた理性でこの「障害」というトピック全体をとらえられただけではなく、
人間としての在りようを発見させてもらったと思う。
やすさんの言う個性というものの本質へ一歩ちかづいたように思えた。

 

令和哲学でいう技術とは、何か物理的な何かをつくるとかの類のテクニック技術ではなく、
自分自身をどう思い、どうとらえるのか、この森羅万象のメカニズムを通した認識について言っていることは言うまでも無いと思う。

 

このメカニズムに沿ったすべては変化に溢れ、ゆえに変化し変化する技術と言えると思う。
あなたをどう思うかの門はだれにでも開かれている。
そしてその秘密を知りえることも感じることも制限はない。

 

他にも、長年つっかかっていたことがあった。

 

自分にとって今回のテーマは、前回の哲学カフェ「人と出会える喜び シン・教育~条件づけられない魅力が今ここ138億年を癒す~」の続編であった。
セクシャリティ・性的マイノリティ、偏見と差別などのテーマにおいても私は納得できる向き合い方に答えが出たことがなかった。
このテーマも私は「あなたはあなた=個性」としての領域から出なかったテーマであったのだ。

 

このNoh先生の一言は、セクシャリティ・性的マイノリティへの向き合い方にも答えを与えてくれた。
さらにこの一文にある「技術の制限はない」には、広げた視野の中に、さらに共通の希望を指していることに私は心から感動した。
こんなにカフェに参加していて泣いて笑って感動して憤ったことは無かったと思う・・
最終日になるほど!と解放感を得るところまで体験した記憶に残る令和哲学カフェだった。

 

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